【海外派遣者】
大木(2013)によれば、米国企業、欧州企業、日本企業の海外展開を比較する研究群の中で、海外子会社への海外派遣者(駐在員 expatriate)に関する日本企業の特徴として、次のことが指摘されてきた。
- 1970年代から海外子会社における日本人の海外派遣者の多さが指摘されるようになる(Negandhi & Baliga, 1979)。
- 1980年代からはさらに第三国国籍人材(third country national; TCN)の少なさが指摘されるようになる(Tung, 1982)。
特に a については、どの文献でも指摘されており、特にKoppは日本の国際的な地位が低下した1990年代に、aについて最も注目した研究者である(Kopp, 1994)。こうしたことから、日本人研究者の間ではステレオタイプ的に、日本企業の多すぎる日本人海外派遣者が、問題として繰り返し指摘されるようになるわけだが、実は、Negandhi and Baliga (1979)では、逆に米国企業の早すぎる現地化と海外派遣者の減らし過ぎに警鐘が鳴らされていた。本社とのパイプ役を果たす本国人材(parent-country national; PCN)がいなくなり、アメリカン・ジレンマと呼ばれるような難しい状況に陥っていた。その原因の一つは、米国人海外派遣者の失敗率(途中帰任)が近年まで一貫して高いことにあった(Tung, 1982, Tungli & Peiperl, 2009)。
- Kopp, R.
(1994).
International human resource policies and practices in Japanese, European, and United States multinationals.
Human Resource Management, 33(4), 581-599.
☆☆☆ 【2016年】
- Negandhi, A. R., & Baliga, B. R.
(1979▲).
Quest for survival and growth: A comparative study of American, European, and Japanese multinationals.
New York: Praeger.
- Tung, R. L.
(1982).
Selection and training procedures of U.S., European, and Japanese multinationals.
California Management Review, 25(1), 57-71.
☆☆☆ 【2016年】
- Tungli, Z., & Peiperl, M.
(2009).
Expatriate practices in German, Japane, UK, and US multinational companies: A comparative survey of changes.
Human Resource Management, 48(1), 153-171.
☆☆☆ 【2016年】
- 大木清弘(2013▲)
「国際人的資源管理論における日本企業批判: 日本人海外派遣者問題の再検討」
組織学会編『組織論レビューI』白桃書房, pp.1-42.
【海外帰任者】
海外帰任者(repatriate)に関する研究は、初期には、現象学的社会学で有名なシュッツによる復員兵に関する考察がある(Schuetz, 1945)。そもそも、本国から海外に派遣されると、滞在先でカルチャー・ショックを受けることは知られており、彼らの順応の程度がUカーブになるとしたら、海外に滞在した人が帰国しても、今度は本国において帰国ショックを受けると主張されるようになり、それをGullahorn and Gullahorn (1963)は、再度のUカーブを経てWカーブを描くと主張した(内藤, 2013)。
帰国ショックの原因としては、Feldman (1991)の挙げた「帰任者の仕事変化」(repatriate job changes)は重要であろう。実は、米国企業でも海外帰任者の1/4〜1/2もの人が、帰国後1〜2年以内に離職するといわれ、海外派遣による個人の成長が、帰任後の社内でのキャリア・アップに必ずしも結びつかないことが問題となっている(Black, 1992; Bossard & Peterson, 2005)。海外帰任者の再適応に関しては、Blackとその共著者が、1990年代に集中して多くの論文と本を書いており、その中には米国企業を対象にしたもの(Black & Gregersen, 1991)、日本企業を対象にしたものもある(Black, 1994)。
- Black, J. S.
(1992▲).
Coming home: The relationship of expatriate expectations with repatriation adjustment and job performance.
Human Relations, 45(2), 177-192.
- Black, J. S. (1994▲).
O kaerinasai: Factors related to Japanese repatriation adjustment.
Human Relations, 47(12), 1489-1508.
- Black, J. S., & Gregersen, H. B.
(1991).
When Yankee comes home: Factors related to expatriate and spouse repatriation adjustment.
Journal of International Business Studies, 22(4), 671-695.
☆☆☆ 【2016年】
- Bossard, A. B., & Peterson, R. B.
(2005).
The repatriate experience as seen by American expatriates.
Journal of World Business, 40(1), 9-28.
☆☆☆ 【2016年】
- Feldman, D. C.
(1991).
Repatriate moves as career transitions.
Human Resource Management Review, 1(3), 163-178.
☆☆☆ 【2016年】
- Gullahorn, J. T., & Gullahorn, J. E.
(1963).
An extension of the U-curve hypothesis.
Journal of Social Issues, 19(3), 33-47.
☆☆☆ 【2016年】
- Schuetz, A.
(1945).
The homecomer.
American Journal of Sociology, 50(5), 369-376.
(Schutz, A. (1964). Collected papers II: Studies in social theory (edited and introduced by A. Brodersen). Hague, Netherlands: Martinus Nijhoff (pp.106-119)
(桜井厚訳『現象学的社会学の応用』御茶の水書房,
1997 (第2章「帰郷者」pp.26-46))
☆☆☆ 【2016年】
- 内藤陽子(2013▲)「海外派遣帰任者のキャリア・マネジメント: 帰国者一般の議論から企業や組織でのマネジメントの議論まで」組織学会編『組織論レビューI』白桃書房, pp.47-89.
【プロフェッショナル】
官僚制組織が上意下達の権限構造で管理されるものだとすると、プロフェッショナルとは、そうした権限構造ではなく、上司の専門知識と能力によって統制されるものである。官僚機構におけるプロフェッショナルの管理を特集した1965年のAdministrative Science Quarterly (ASQ) 第10巻第1号で問題提起論文となったThompson (1965)は、官僚制組織におけるイノベーションの障害を変えるものとしてプロフェッショナルに期待していた。
Merton (1949)は、コスモポリタンとローカルに分類し、コスモポリタンに該当する一つのタイプとしてプロフェッショナルを挙げていただけだったが、Gouldnerの連作 (1957; 1958)は、Mertonを引用して、大学のスタッフ(研究者、教員、事務職員) 130人を対象にした調査を行い、コスモポリタンとローカルは程度の差にすぎないとし、さらに6タイプに細分化して分析して、後続のプロフェッショナル研究に大きな影響を与えた。
現在では、多くの研究者が、Wilensky (1964)によって整理されたプロフェッショナルの定義を採用している。すなわち、@長期的な教育訓練によって初めて獲得できる高度で体系化された専門知識や専門技能。A職務の自律性。B専門知識を有する集団のメンバーとしての高い職業規範や倫理観(西脇, 2013)。
ただしAbbott (1981)は、プロフェッション(専門的職業集団)内で、@診断: 問題の分類、A推論: 診断の理由づけと治療の方向性や範囲の設定、B治療: 問題解決のためのアクション、の中で、現場に近い@Bよりも遠いAに当たる人のステータスが高く、そのため、より高いステータスを求める競争の結果、プロフェッショナルがどんどん現場から乖離していくことを「プロフェッショナルの危機」だとした。Abbott (1988)は、それをプロフェッション間の支配権(jurisdiction)争いとそれに伴うプロフェッションの序列化として整理した。
- Abbott, A.
(1981).
Status and status strain in the professions.
American Journal of Sociology, 86(4), 819-835.
★★☆ 【2014年11月19日】【2015年5月19日】
【解説】阿部真美, 劉冬蕾, 山本尚忠 (2015)「専門職および専門職集団におけるステータス決定要因―経営学輪講 Abbott (1981)」『赤門マネジメント・レビュー』14(10), 601-612. PDF
- Abbott, A. (1988▲). The system of professions: An essay on the division of expert labor. Chicago, IL: University of Chicago Press.
- Gouldner, A. W.
(1957).
Cosmopolitan and locals: Toward an analysis of latent social roles I.
Administrative Science Quarterly, 2(3), 281-306.
☆☆☆ 【2016年】
- Gouldner, A. W.
(1958).
Cosmopolitan and locals: Toward an analysis of latent social roles II.
Administrative Science Quarterly, 2(4), 444-480.
☆☆☆ 【2016年】
- Merton, R. K.
(1949).
Patterns of influence: A study of interpersonal influence and of communications behavior in a local community.
In P. F. Lazarsfeld, & F. N. Stanton, (Eds.), Communications research, 1948-1949 (pp.180-219). New York: Harper & Brothers.
=Merton, R. K.
(1957).
Patterns of influence: Local and cosmopolitan influentials.
Social theory and social structure (Rev. and enl. Ed.) (pp.387-420 pp.441-474). New York: Free Press.
(森東吾・森好夫・金沢実・中島竜太郎訳「影響の型式: ローカルな影響者とコスモポリタンな影響者」『社会理論と社会構造』(pp.351-382) みすず書房, 1961)
☆☆☆ 【2016年】
- Thompson, V. A.
(1965).
Bureaucracy and innovation.
Administrative Science Quarterly, 10(1), 1-20.
★★☆ 【2016年4月27日】
- Wilensky, H.
(1964).
The profession of everyone?
American Journal of Sociology, 70(2), 137-158.
☆☆☆ 【2016年】
- 西脇暢子(2013▲)「組織研究の視座からのプロフェッショナル研究レビュー: 専門職従事者から知識の担い手への転換とその影響および意義」組織学会編『組織論レビューI』白桃書房, pp.95-140.
【心理的契約】
Macneil (1985)は、文書化されているかいないかにかかわらず、すべての契約は基本的に心理的なものだと説いた。たとえ会社側が法律的に契約に違反しなくても、従業員との間の心理的契約を不履行(breach)・違反(violation)することはあるかもしれない。
Rousseau (1989)は心理的契約を「当該個人と他者との間の互恵的な交換について合意された項目や条件に関する個人の信念」(p.123)と定義した。つまり、もはや二者関係ではなく、従業員側が会社側に対して抱く一方的な互恵的期待として心理的契約をとらえ、その期待が会社側に裏切られたとき、心理的契約の契約不履行・違反と呼ぶことになる。
心理的契約の研究は契約内容(content)の研究と、契約不履行・違反の研究に大別される。契約内容の研究はRousseau (1990)が測定尺度を提案し、224人のMBA取得者を調査し、正準相関分析(canonical correlation analysis)をし、Macneil (1985)の「取引的契約」「関係的契約」に対応する取引的契約義務(transactional contract obligations)と関係的契約義務(relational contract obligation)を見出したと主張しているが、その後の研究では一貫性はみられない。契約不履行・違反に関してはRobinson & Morrison (2000)の尺度がよく使われる(服部, 2013)。
- Macneil, I. R.
(1985).
Relational contract: What we do and do not know.
Wisconsin Law Review, 483, 55-69.
☆☆☆ 【2016年】
- Robinson, S. L., & Morrison, E. W.
(2000).
The development of psychological contract breach and violation: A longitudinal study.
Journal of Organizational Behavior, 21(5), 525-546.
☆☆☆ 【2016年】
- Rousseau, D. M.
(1989).
Psychological and implied contracts in organization.
Employee Responsibilities and Rights Journal, 2(2), 121-139.
★★☆ 【2014年11月26日】【2015年5月12日】
【解説】山城慶晃, 菅章 (2015)「暗黙的契約とは何だったのか?―経営学輪講Rousseau (1989)」『赤門マネジメント・レビュー』14(7), 403-412. PDF
Yamashiro, Y. (2015).
Implied contract: Birth and rebirth.
Annals of Business Administrative Science, 14, 309-321.
doi: 10.7880/abas.14.309 Download
- Rousseau, D. M.
(1990).
New hire perceptions of their own and their employer’s obligations: A study of psychological contracts.
Journal of Organizational Behavior, 11(5), 389-400.
☆☆☆ 【2016年】
- 服部泰宏(2013▲)「心理的契約研究の過去・現在・未来: 50年間にわたる研究の到達点と課題」組織学会編『組織論レビューI』白桃書房, pp.147-186.
【組織アイデンティティ】
一体化(identification)は、その組織の目的・価値の観点から意思決定するようになる現象を指している(March & Simon, 1958, ch.3)。後にMael & Ashforth (1992)が開発した「誰かが○○(組織の名称)を批判した時は、個人的に侮辱されたように感じる」など6項目から構成されているMael尺度は、一体化の測定尺度として幅広く用いられている(高尾, 2013)。
他方、組織アイデンティティ論は、Albert & Whetten (1985)が、(a)一つでなく複数存在していてもいい、(b)自己分類できればユニークでなくてもいい、(c)連続的であれば時が経つにつれて変化してもいい、とアイデンティティ概念を大幅に拡張した(山城, 2015)。このことによって、研究が一気に展開を始め、Dutton and Dukerich (1991)によって、実証的な研究が本格的に始まることになる(佐藤, 2013)。
Ashforth & Mael (1989)は、社会心理学で1970年代から始まり、1987年に解説書Turner (1987)が出たことで一気に認知されるようになった社会的アイデンティティ理論(social identity theory; SIT)と自己カテゴリー化理論(self-categorization theory)に依拠して、組織identificationを論じた。これにより1990年代以降、identificationという用語は、一体化の意味を離れ、アイデンティティの確立・獲得のようなニュアンスの用語として用いられるようになり、組織アイデンティティの話に吸収されていく。
- Albert, S., & Whetten, D. A.
(1985).
Organizational identity.
In L. L. Cummings, & B. M. Staw (Eds.), Research in organizational behavior, Vol. 7 (pp.263-295). Greenwich, CT: JAI Press.
★★★ 【2014年12月10日】
【解説】山城慶晃(2015)「組織アイデンティティの三つの基準とは何だったのか?―経営学輪講 Albert and Whetten (1985)」『赤門マネジメント・レビュー』 14(2), 77-88. PDF
Yamashiro, Y. (2015).
Conceptual expansion into organizational identity change.
Annals of Business Administrative Science, 14, 193-203.
doi: 10.7880/abas.14.193 Download
- Ashforth, B. E., & Mael, F.
(1989).
Social identity theory and the organization.
Academy of Management Review, 14(1), 20-39.
★★★ 【2014年7月9日】【2016年6月8日】
- Dutton, J. E., & Dukerich, J. M.
(1991).
Keeping an eye on the mirror: Image and identity in organizational adaptation.
Academy of Management Journal, 34(3), 517-554.
★★★ 【2016年6月29日】
- Mael, F., & Ashforth, B. E.
(1992).
Alumni and their alma mater: A partial test of the reformulated model of organizational identification.
Journal of Organizational Behavior, 13, 103-123.
★★☆ 【2014年12月3日】【2015年5月26日】
【解説】梶原梨津子, 劉釈丹(2015)「Mael尺度を考える―経営学輪講 Mael and Ashforth (1992)」『赤門マネジメント・レビュー』 14(9), 519-526. PDF
- March, J. G., & Simon, H. A. (1958▲;
1993).
Organizations. New York: John Wiley & Sons; Cambridge, MA: Blackwell.
(第2版の訳: 高橋伸夫訳『オーガニゼーションズ 第2版』ダイヤモンド社, 2014)
- Turner, J. C. (1987▲).
Rediscovering the social group: A self-categorization theory. Oxford, UK: Basil Blackwell.
(蘭千壽 他訳『社会集団の再発見: 自己カテゴリー化理論』誠信書房, 1995)
- 佐藤秀典(2013▲)「組織アイデンティティ論の発生と発展: 『我々は何者であるか』を我々はどのように考えてきたのか」組織学会編『組織論レビューII』白桃書房, pp.1-36.
- 高尾義明(2013▲)「組織成員のアイデンティフィケーション」組織学会編『組織論レビューI』白桃書房, pp.193-235.
【動的能力/ダイナミック・ケイパビリティ】
ワーキング・ペーパー段階から引用されて有名だった動的能力(dynamic capability; DC)の論文Teece, Pisano, and Shuen (1997)がようやくジャーナルに掲載された。そこでは、経営戦略論のポジショニング・アプローチや資源ベース・アプローチと対比させて、環境変化に適応するために自らの資産の新結合を生み出す能力を動的能力と呼んだと理解されている。ただし、動的能力そのものに関する明示的な定義・議論はなかったので、Eisenhardt and Martin (2000)が、そのような概念定義をしている。さらにZollo and Winter (2002)は、組織が動的能力を開発するメカニズムを説いている。
それ以降、資源ベース系の研究者が大量に参入し、とりあえず「変化(動的)」「競争優位」「能力」というキーワードを入れて、「組織が長期にわたって(環境変化を乗り越えて)競争優位を獲得・維持していくために必要な能力」を取り上げ、論文のディスカッションや結論部分で、これが上記3論文でいう「動的能力に関係している」と書くことが広く行われるようになった。大量に流入した資源ベース系の研究が、実際には、「資源」の静的な状態記述とその変化の議論にすぎないにもかかわらず、研究開発、買収、提携の研究に安易にDC論というラベルを付けたことで、DC論の本質が見失われ、(a)「何が動的なのか」という概念上の曖昧さや混乱を生み、(b)それが「能力という安定的な特性」によって説明されるのかについて多様な見解が生じて、いまや動的能力概念はあいまいで多義的なものになってしまっている(福澤, 2013)。
そこでHelfat and Winter (2011)は、業務能力と動的能力という2つの概念を対峙させた上で、両者に共通する能力も存在することが混乱の原因だと考えた。すなわち、純粋な業務能力・純粋な動的能力・共通能力の3種類が存在すると考え、業務能力を除いた純粋な動的能力が観察される例として、小売業の店舗の拡大等、企業が成長している例を挙げたのである。このように純粋な動的能力が企業成長に必要な純粋な能力であるとすると、その主要部分は、かつてペンローズが考えた「規模の経済性とは異なる成長の経済性」をもたらす能力と同じである可能性が高い。
- Eisenhardt, K. M., & Martin, J. A.
(2000).
Dynamic capabilities: What are they?
Strategic Management Journal, 21(10-11), 1105-1121.
★★★ 【2015年6月23日】
【解説】加藤木綿美, 市來和樹 (2015)「DCは持続的競争優位につながるのか?―経営学輪講 Eisenhardt and Martin (2000)」『赤門マネジメント・レビュー』14(12), 689-702. PDF
- Helfat, C. E., & Winter, S. G.
(2011).
Untangling dynamic and operational capabilities: Strategy for the (N)ever-changing world.
Strategic Management Journal, 32(11), 1243-1250.
★★★ 【2015年12月16日】
【解説】岩尾俊兵, 菊地宏樹 (2016)「ダイナミック・ケイパビリティ論からペンローズへ―経営学輪講 Helfat and Winter (2011)」『赤門マネジメント・レビュー』15(2), 99-108. PDF
- Teece, D. J., Pisano, G., & Shuen, A.
(1997).
Dynamic capabilities and strategic management.
Strategic Management Journal, 18(7), 509-533.
★★★ 【2014年12月17日】【2015年7月14日】
- Zollo, M., & Winter, S. G.
(2002).
Deliberate learning and the evolution of dynamic capabilities.
Organization Science, 13(3), 339-351.
★★★ 【2015年6月16日】
【解説】持田弥, 岩尾俊兵 (2015)「ダイナミック・ケイパビリティと組織学習への投資―経営学輪講Zollo and Winter (2002)」『赤門マネジメント・レビュー』14(8), 433-450. PDF
- 福澤光啓(2013▲)「ダイナミック・ケイパビリティ」組織学会編『組織論レビューII』白桃書房, pp.41-84.
【技術の社会的構成(SCOT)】
従来、人工物(artifact)の研究では、その選択をその有益さを理由として説明するものがほとんどであった。それに対して、Pinch and Bijker (1984; 1987)が唱えた技術の社会的構成(social construction of technology: SCOT)の研究では、その人工物が有益とみなされるに至った社会的メカニズムによる説明を試みる(宮尾, 2013)。より実践的には、ある人工物について技術合理的な定説を取り上げ、それとは別の社会的な説明が可能であることを示す。
他方、Callon (1987)は、フランスにおける電気自動車(VEL)のプロジェクトを研究したが、このアクター・ネットワーク理論では、ネットワークを構成するアクターとして、社会的存在(human actor)も物的存在(non-human actor: actant)も同列に扱う。Bijker (1987)も、アクター・ネットワーク理論に影響されて、技術フレーム(technological frame)という概念を用いて、ベークライトの開発プロセスを検討し、技術フレームに巻き込まれている(inclusion)度合の相違によって、主体による人工物の解釈や問題解決のための手法が異なると主張した。後にBijker (1995)は、SCOT、アクター・ネットワーク理論、システムズ・アプローチ(Hughes, 1983)の三つをまとめて社会技術アンサンブル(sociotechnical ensembles)と呼ぶようになった(綾部, 2006)。
- Bijker, W. E.
(1987).
The social construction of Bakelite: Toward a theory of invention.
In W. E. Bijker, T. P. Hughes, & T. J. Pinch (Eds.),
The social construction of technological systems (pp.159-187). Cambridge, MA: MIT Press.
☆☆☆ 【2016年】
- Bijker, W. E.
(1993).
Do not despair: There is life after constructivism.
Science, Technology, & Human Values, 18(1), 113-138.
☆☆☆ 【2016年】
- Bijker, W.
(1995).
Sociohistorical technology studies.
In S. Jasanoff, G. E. Markle, J. C. Petersen, & T. Pinch (Eds.),
Handbook of science and technology studies (pp. 229-256). Thousand Oaks, CA: Sage.
★★★ 【2016年7月20日】
- Callon, M.
(1987).
Society in making: The study of technology as a tool for sociological analysis.
In W. E. Bijker, T. P. Hughes, & T. J. Pinch (Eds.),
The social construction of technological systems (pp.83-103). Cambridge, MA: MIT Press.
☆☆☆ 【2016年】
- Hughes, T. P. (1983▲). Networks of power: Electrification in Western society, 1880-1930. Baltimore, MD: Johns Hopkins University Press. (市場泰男訳『電力の歴史』平凡社, 1996)
- Pinch, T. J., & Bijker, W. E.
(1987).
The social construction of facts and artifacts: Or how the sociology of science and the sociology of technology might benefit each other.
In W. E. Bijker, T. P. Hughes, & T. J. Pinch (Eds.),
The social construction of technological systems (pp.17-50). Cambridge, MA: MIT Press.
A shortened and updated version of Pinch, T. J., & Bijker, W. E. (1984▲). The social construction of facts and artifacts: Or how the sociology of science and the sociology of technology might benefit each other. Social Studies of Science, 14(3), 399-441.
☆☆☆ 【2015年1月7日】【2016年】
- 宮尾学 (2013▲)「技術の社会的形成」組織学会編『組織論レビューII』白桃書房, pp.89-136.
- 綾部広則(2006)「技術の社会的構成とは何か」『赤門マネジメント・レビュー』5(1), 1-18.
PDF
【資源依存パースペクティブ】
1970年前後から資源依存パースペクティブに関する論文が出始めるが、その多くはPfefferによる単著もしくはSalancikあるいはLeblebiciとの共著の論文で、1978年には、それらを集大成したPfeffer & Salancik (1978)が出版される。Pfeffer (1987)は自身の研究を振り返り、資源依存パースペクティブの基本的な主張を5つにまとめている。1996年にSalancikが亡くなった後、Pfeffer & Salancik (1978)出版から25年を経た2003年にClassic Editionを刊行するにあたって、Pfeffer (2003)は自身で再評価を行っている。
- Pfeffer, J.
(1987).
A resource dependent perspective on intercorporate relations.
In M. S. Mizruchi & M. Schwartz (Eds.),
Intercorporate relations: The structural analysis of business (pp.22-55). Cambridge, MA: Cambridge University Press.
★★☆ 【2015年6月9日】
- Pfeffer, J.
(2003).
Introduction to the classic edition.
In J. Pfeffer & G. R. Salancik,
The external control of organizations: A resource dependence perspective (pp.xi-xxx). Stanford, CA: Stanford University Press.
★★★ 【2015年6月30日】
【解説】宋元旭, 趙智賢 (2015)「資源依存パースペクティブの自己評価―経営学輪講 Pfeffer (2003)」『赤門マネジメント・レビュー』14(11), 629-638. PDF
-
Pfeffer, J., & Salancik, G. R. (1978▲).
The external control of organizations: A resource dependence perspective. New York: Harper and Row.
- 小橋勉 (2013▲)「資源依存パースペクティブの理論的展開とその評価」組織学会編『組織論レビューII』白桃書房, pp.141-172.
【コンピュータ・シミュレーション】
2007年は、シミュレーション研究方法論に関する論文Harrison et al. (2007)、Davis et al. (2007)、カーネギー学派を再評価しようというGavetti et al. (2007)の論文が掲載された。どの論文でも、経営組織のシミュレーション研究の嚆矢と位置付けているのが、カーネギー・メロン大学での研究の集大成Cyert and March (1963)である。その後、Cohen, March and Olsen (1972)のゴミ箱モデルが登場し、さらにMarch (1991)では組織学習の研究にもシミュレーションが用いられる。こうしてMarchとその共同研究者たちがシミュレーション研究の一分野を形成することになる。
- Cohen, M. D., March, J. G., & Olsen, J. P.
(1972).
A garbage can model of organizational choice.
Administrative Science Quarterly, 17(1), 1-25.
☆☆☆ 【2016年】
【解説】稲水伸行 (2012)「ゴミ箱の中を覗いてみる:ソースコードに隠された暗黙のルール―経営学輪講Cohen, March, and Olsen (1972)」『赤門マネジメント・レビュー』11(5), 327-340. PDF
Inamizu, N. (2015).
Garbage can code: Mysteries in the original simulation model.
Annals of Business Administrative Science, 14, 15-34.
doi: 10.7880/abas.14.15 Download
- Cyert, R. M., & March, J. G. (1963▲). A behavioral theory of the firm. Englewood Cliffs, NJ: Prentice-Hall. (松田武彦監訳・井上恒夫訳『企業の行動理論』ダイヤモンド社, 1967)
- Davis, J. P., Eisenhardt, K. M., & Bingham, C. B.
(2007).
Developing theory through simulation methods.
Academy of Management Review, 32(2), 480-499.
★☆☆ 【2015年7月7日】
- Gavetti, G., Levinthal, D., & Ocasio, W.
(2007).
Neo-Carnegie: The Carnegie school’s past, present, and reconstructuring for the future.
Organization Science, 18(3), 523-536.
☆☆☆ 【2016年】
- Harrison, R., Lin, Z., Carroll, G. R., & Carley, K. M.
(2007).
Simulation modeling in organizational and management research.
Academy of Management Review, 32(4), 1229-1245.
☆☆☆ 【2016年】
-
March, J. G.
(1991).
Exploration and exploitation in organizational learning.
Organization science, 2(1), 71-87.
★★☆ 【2014年6月18日】
【解説】三富悠紀, 高橋伸夫 (2014)「相互学習モデルの本当の結論―経営学輪講 March (1991)」『赤門マネジメント・レビュー』13(9), 353-370. PDF
Mitomi, Y., & Takahashi, N. (2015).
A missing piece of mutual learning model of March (1991).
Annals of Business Administrative Science, 14, 35-51.
doi: 10.7880/abas.14.35 Download
- 稲水伸行 (2013▲)「経営組織のコンピューター・シミュレーション―J. G. March 系組織理論の発展の系譜―」組織学会編『組織論レビューII』白桃書房, pp.179-226.