Eisenhardt, K. M., & Martin, J. A. (2000). Dynamic capabilities: What are they? Strategic Management Journal, 21(10-11), 1105-1121. ★★★ 【2015年6月23日】

 この論文では、DC (Dynamic Capabilities)は、先行する(antecedent)組織的・戦略的ルーチンだと考えられており、「市場の変化に調和・創造するために、資源を使う企業の過程―特に資源を@統合、A再構成(reconfigure)、B獲得・解放する過程。したがって、DCは、市場創出・衝突(collide)・分割(split)・進化・死という新しい資源配置(resource configurations)を成し遂げる組織的・戦略的ルーチンである」と定義する(p.1107)。その上で、

  1. DCを@資源を統合、A企業内の資源を再構成、B資源を獲得・解放するものに三分して、資源と関係づけて解説する(pp.1107-1108)。
  2. Teece et al. (1997)が、DCのユニークさや特異性を挙げていたことに対して、best practiceのようなものは企業間で共通性(commonalities)があると主張する(pp.1108-1110)。
  3. 効果的なDCのパターンは市場変動性(market dynamism)に依存している。変化が穏やかなら、DCは従来いわれているようなルーチンだが、変化が速い(high velocity)市場では、DCは単純で、(分析的ではなくて)経験的で、(線形ではなくて)反復的なルーチン・過程になると主張する(pp.1110-1114)。
  4. DC開発の重要な学習メカニズムとして、反復練習(repeated practice)を挙げ、小さな失敗、危機、経験のペースがDCの進化に影響すると主張する(pp.1114-1116)。

 こうして、1で資源を強調することで、RBV (Resource-Based View)の研究者のDC研究参入を容易にしたという功績はある。ただし、たとえば、2の共通性の議論のところで、製品開発過程が議論されるのだが、製品開発過程を「重要なDC」である(p.1108)としており、さらにDiscussionでは、製品開発に加えて提携や戦略的意思決定までDCだとしていて(p.1116)、3と4を含め、結局、この論文では、資源再配置に影響するルーチンは何でもDCになるらしく、DCがそれで良かったのか(本来のDCを曲解していないか)疑問が残る。


《参考文献》

Teece, D. J., Pisano, G., & Shuen, A. (1997). Dynamic capabilities and strategic management. Strategic Management Journal, 18(7), 509-533. ★★★

【解説】加藤木綿美, 市來和樹 (2015)「DCは持続的競争優位につながるのか?―経営学輪講 Eisenhardt and Martin (2000)」『赤門マネジメント・レビュー』 14(12), 689-702. ダウンロード


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