この論文では、DC (Dynamic Capabilities)は、先行する(antecedent)組織的・戦略的ルーチンだと考えられており、「市場の変化に調和・創造するために、資源を使う企業の過程―特に資源を@統合、A再構成(reconfigure)、B獲得・解放する過程。したがって、DCは、市場創出・衝突(collide)・分割(split)・進化・死という新しい資源配置(resource configurations)を成し遂げる組織的・戦略的ルーチンである」と定義する(p.1107)。その上で、
こうして、1で資源を強調することで、RBV (Resource-Based View)の研究者のDC研究参入を容易にしたという功績はある。ただし、たとえば、2の共通性の議論のところで、製品開発過程が議論されるのだが、製品開発過程を「重要なDC」である(p.1108)としており、さらにDiscussionでは、製品開発に加えて提携や戦略的意思決定までDCだとしていて(p.1116)、3と4を含め、結局、この論文では、資源再配置に影響するルーチンは何でもDCになるらしく、DCがそれで良かったのか(本来のDCを曲解していないか)疑問が残る。
Teece, D. J., Pisano, G., & Shuen, A. (1997). Dynamic capabilities and strategic management. Strategic Management Journal, 18(7), 509-533. ★★★
【解説】加藤木綿美, 市來和樹 (2015)「DCは持続的競争優位につながるのか?―経営学輪講 Eisenhardt and Martin (2000)」『赤門マネジメント・レビュー』 14(12), 689-702. ダウンロード