有名な論文なので、授業で何度も輪読しているが、何度読んでもよく分からない論文である。投稿(1991年)から採択・掲載(1997年)まで6年もかかり、その間、ワーキング・ペーパーの状態で多くの論文で引用されて有名になった。が、多分、有名になったので、引用を当て込んで掲載されたのではないだろうか。テレビの人気タレントと同じで、たとえ実力がなくても、視聴率を稼げると分かると、テレビの出演オファーが来る・・・みたいな。一応、みんなが知っている有名論文なので★★★にしてあるが、正直な個人的評価は★☆☆である。一言で評すれば論旨不明、rejectされてもおかしくない出来である。
論文全体の構成としては、まず、(1)リソース・ベース理論(RBV)について論じ、その上で、(2)その拡張として動的能力(dynamic capability; DC)アプローチについて論じる(p.513)と宣言されている。とはいうものの、RBVとDCアプローチの違いが明示的に書かれていない。
企業がどこに向かうのかは、Teeceが好きな「資産」のポートフォリオとしての(a)現在の資産位置(asset position)と(b)これまでの進化経路(evolution path)の関数であり、その中で、企業の競争優位は、調整と結合(combining)のプロセスに依存するとしている(p.509; p.522)。この表現からすると、RBVは(a)の部分だけで、それ以外がRBVとは違う部分なのか? とも思うが、推測の域を出ない。さらに想像をたくましくすれば・・・Table 1のパラダイムの対照表でのRBVとDCとの違いは、レントの性質が、RBVはリカードのレントで、DCはシュンペーター的だとしているので、RBVでは希少価値のある資源からレントが発生すると考えられているが、DCアプローチではシュンペーター的イノベーションすなわち資源の新結合(new combination)でレントが発生すると考えているのかもしれない。Eisenhardt and Martin (2000)も同じ印象をもったようで、DCを新しい資源配置(resource configurations)を成し遂げる組織的・戦略的ルーチンだと定義した。ただし、いずれにせよ、この論文にははっきりと書かれていない。
Eisenhardt, K. M., & Martin, J. A. (2000). Dynamic capabilities: What are they? Strategic Management Journal, 21(10-11), 1105-1121. ★★★ 【2015年6月23日】