Helfat, C. E., & Winter, S. G. (2011). Untangling dynamic and operational capabilities: Strategy for the (N)ever-changing world. Strategic Management Journal, 32(11), 1243-1250. ★★★ 【2015年12月16日】

 この論文は研究ノート(Research Notes and Commentaries)である。操業能力(operational capabilities)/通常能力(ordinary capabilities)と動的能力(dynamic capabilities)の間の線引きがあいまいになる理由を説明している。その理由は、「結論」(p.1249)で整理・提示された順に挙げると、

  1. 能力の中には、操業にも動的にも使える(dual-purpose)ものがあるし、より操業的/より動的な変種もある(multiple-variant)から(p.1248)。
  2. ラディカルではない変化にも動的能力がかかわっているから(p.1244)。
  3. 観察期間が異なると観察の粒状性(granularity)に違いが出て、動的に見えたり見えなかったりするから(p.1246)。

 要は、2のように、成功して成長している会社を見ると、なんでもかんでも、それは動的能力があるからだと、ほとんどトートロジーで言い散らかすから、線引きがあいまいになるわけだが、この研究ノートの特筆すべき面白さは、動的能力に関するその吹っ切れた例示である。定義としては、企業が当座の生計を立てる(make a living in the present)能力を操業能力と呼び、生計の資を変える能力を動的能力と呼んでいる(p.1244)わけだが、動的能力に関して挙げられている例が、インテルの新世代半導体チップの開発や、ウォルマート(小売店)、スターバックス(カフェ)、マリオット(ホテル)のチェーン展開や、新しい油田・ガス田の開発なのである(pp.1246-1247)。要するに成長する力こそが動的能力だと、ほぼ言い切ってしまっている。これは、動的能力の旗揚げから約15年かけて一周回って、ペンローズの『会社成長の理論』に戻ってきたことを意味している。それなら動的能力が何だったのか、よく理解できる。ペンローズの『会社成長の理論』については高橋(2002)Takahashi (2015)を参照のこと。


《参考文献》

高橋伸夫 (2002) 「ペンローズ『会社成長の理論』を読む」 『赤門マネジメント・レビュー』1(1), 105-124. PDF

Takahashi, N. (2015). An essential service in Penrose’s economies of growth. Annals of Business Administrative Science, 14, 127-135. doi: 10.7880/abas.14.127. 日本語要約・ダウンロード


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