Zott, C. (2003). Dynamic capabilities and the emergence of intraindustry differential firm performance: Insights from a simulation study. Strategic Management Journal, 24(2), 97-125. ★★★ 【2012年11月28日】

 ダイナミック・ケイパビリティ(DC)についてシミュレーションを行った論文。まず、Campbell (1965)の進化モデルにならって、企業の進化学習システム(system of evolutionary learning)を 変異(variation)→淘汰(selection)→保持(retention) として扱う。これを企業内の「進化する資源」(evolving resources)と呼んでいて、これがDCということになっている(Figure 1)。そして、変異にはコスト、淘汰には学習、保持にはタイミングが対応していて、このコスト、学習、タイミングがDCの属性(attributes)だということになっているが、その根拠はよくわからない。

 シミュレーションでは、アウトプット量 q 、製品差別化のための資源 r (コスト Rar 2 つまり投入資源 r はコスト R に対して凹)、工程イノベーションのための資源 i (コストIi 2 つまり投入資源 i はコスト I に対して凹)と設定し、資源配置(resource configuration) (q, r, i )を考える。この資源配置に関して、コストをかけて模倣・実験を行い(変異)、その中から良いものを選んで学習し(淘汰)、実行のタイミングをはかる(保持)、そして他社と競争を行う。シミュレーションは2社の200期モデルで、環境の影響はなしとされ、1回しか試行されない(1回しか試行しないというのはシミュレーションとしては異例であり疑問)。

 このシミュレーション結果をもとにした論文の結論は、意外なものである。通常は、パフォーマンスが高いのはDCが高いからだという議論がなされることが多く、DCの議論はトートロジーだと批判されることが多いのだが、この論文はその要約にも書いてある通り、同じDC (コスト、学習、タイミング)をもつ企業でも、パフォーマンスに差が出るというのが結論である。


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