Weick, K. E. (1987). Organizational culture as a source of high reliability. California Management Review, 29(2), 112-127. ★★★ 【2017年6月7日】

 ワイクらしく様々な小ネタ(事例)がちりばめられているので、目移りして論旨が分かりにくいが、最初のページ(p.112)に “requisite variety” と引用符付きで出てくる概念が鍵になる。この論文の中ではきちんと引用もされていないが、これはアシュビー(William Ross Ashby)の法則(Ashby’s Law)とも呼ばれる「必要多様性の法則」(law of requisite variety)のことで、簡単に言うと「多様性だけが多様性を中和できる(only variety can destroy variety)」(Ashby, 1956, p.207)という法則。一時期(この論文が書かれた頃も)サイバネティクス系の人たちの間で流行っていた。何か証拠があるわけでもなく、みなさん「当然だ」とおっしゃるだけで、安易に「法則」だと信じるのは要注意なのだが、この論文では、この必要多様性の法則に則り、

  1. 個人では多様性が足りないので、多様な個人が集まったチームで集団必要多様性(collective requisite variety)を高めること、
  2. 大変な時よりも、何も起きない(non-event)とき、注意が散漫になり、誤りが起こる。小さな逸脱が拡大しないように、常に疑うこと(chronic suspicion)、
  3. イナクトメント(=環境有意味化)
が、信頼性向上の助けになる。と主張している。そして、類似した意思決定前提と仮定をもつように社会化(それをこの論文では集権化と呼んでいる)した上で、分権化すれば、監視なしにコンプライアンス(compliance)が実現すると主張する(p.124)。そのためには文化が重要で、物語のような象徴的な手段を使って、そうした社会化をしているという(p.125)。

 高信頼性組織に関する重要文献とされるので★★★にしたが、1980年代の匂いがプンプンする読み物としてはともかく、学術論文としてはどうだろう。


《参考文献》

Ashby, W. R. (1956). Requisite variety. An introduction to cybernetics (chap.11: pp.202-218). New York, NY: John Wiley.


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