製品アーキテクチャ(product architecture)とは、製品の機能をそれによって物理的コンポーネントに割り当てるスキーム(scheme; 計画、設計)のことである。つまり、(1)機能要素(機能要件ともいわれる)を並べて関係のあるものを結んだ図表(機能構造ともいわれる)にし、(2)機能要素から物理的コンポーネント(分離可能な部品もしくは部品の塊)へ対応づけ(mapping)し、(3)相互依存的な物理的コンポーネント間のインターフェースを指定したものが製品アーキテクチャである(p.420)。
製品アーキテクチャは、まず二つに分けられる。(2)の機能要素から物理的コンポーネントへの対応づけが一対一で、(3)のインターフェースが分離型(de-coupled interface)の場合、モジュラー・アーキテクチャ(modular architecture)と呼ばれる。それに対して、(2)が一対一以外の複雑な対応づけで、(3)のインターフェースが連結型(coupled interface)のものは、インテグラル・アーキテクチャ(integral architecture)と呼ばれる(p.422)。
さらに、モジュラー・アーキテクチャはインターフェースで三つに分けられる。物理的コンポーネント間のインターフェースがそれぞれ異なる場合にはスロット・アーキテクチャ(slot architecture)と呼ばれる。物理的コンポーネントが共通のバスにつながっていて、同じタイプのインターフェースを使っている場合にはバス・アーキテクチャ(bus architecture)と呼ばれる。インターフェースは同じタイプだが、バスのような共通の一つの要素がないときはセクショナル・アーキテクチャ(sectional architecture)と呼ばれる(p.424)。
インテグラルと三つのモジュラーの計四つのタイプのアーキテクチャを例示した上で、「製品アーキテクチャはきわめて重要だが、すべてのケースに唯一最善のアーキテクチャはない」と主張している(pp.424, 426)。その上で、論文の後半では、製品の変化、製品の多様性、コンポーネントの標準化、製品パフォーマンス、製品開発マネジメントについて、製品アーキテクチャと関連させながら論じている。
ただ気になるのは、モジュラーとインテグラルに分けるときに、(2)(3)の二つの軸を使っていることである。下の2×2の表のような関係になるので、「?」の二つのセルがどのようなものになるのか? もし、そのようなケースは存在しないのだ……ということになると、(2)と(3)は実質的に同じ軸になってしまう。
分離型 | 連結型 | |
一対一 | モジュラー | ? |
一対一以外 | ? | インテグラル |