この論文のタイトルは「技術的不連続と組織環境」になっているが、内容としては、技術的な不連続(discontinuity)というより、論文冒頭(要約2行目)にもあるように、技術的なブレークスルー(breakthrough)に関する論文である。実際、Figures 1a, 1b, 1cを見れば一目瞭然だが、新製品が出れば不連続になるのであり、その中でも特にジャンプの幅が大きいものをブレークスルーと呼んでいるので、ブレークスルーを不連続と呼んでしまっては元も子もない。ちなみに、この論文は1986年の出版だが、1980年代前半は、科学技術の社会学などではブレークスルーという用語は使われ始めていたが、経営学ではまだ浸透しておらず、その意味では時代的な背景を感じさせる論文でもある。事実、本論文中、ブレークスルーを表していると考えられる用語はいくつもあり、一貫性に欠けるので、ここでは、一貫してブレークスルーを用いることにする。
この論文の主要な主張は、つぎのようにまとめられる。
ただし、計8回のブレークスルーを、どのような基準で能力破壊的なものと、能力強化的なものに分類したのか書いていないので、そもそもトートロジーなのではないか、あるいはTable 3やTable 7の結果を見てから後付けで分類したのではないかという疑念は拭えない。さらに、セメント・プラントの生産能力(p.452, Figure 1a)、旅客機の座席数×年間飛行可能距離(p.453, Figure 1b)、ミニコンのCPUの処理能力(p.454, Figure 1c)で見たときの各年の最大のものの伸び率をプロットして、ブレークスルーだったという根拠にしているようだが、そもそもフレークスルーって、○○能力で見たものなのかという疑問がわくだけではなく、Figure 1cではミニコンのブレークスルーは3回あることになっているのに、なぜか最初の1回は無視されて、2回しかなかったことになっているという疑問もある。