Stock, G. N., & Tatikonda, M. V. (2000). A typology of project-level technology transfer processes. Journal of Operations Management, 18(6), 719-737. ★☆☆ 【2011年11月16日】

 技術移転の受け手(recipient)から見た「内側への技術移転」(inward technology transfer; ITT)の分類をして、Agfa社の事例を検証している論文。ITTは、Figure 1で、縦軸に「技術の不確実性」(technology uncertainty)低→高と横軸に「組織的相互作用」(organizational interaction)低→高の2軸からる図(実質的にはマトリックス)として示されており、その中で、対角線上のものが効率的であるとし、それを「移転過程タイプ」(transfer process type)と呼んで、両軸とも低・低の「商業ベースでの購入」(arms-length purchase)から、「容易な購入」(facilitated purchase)、「協力的な引き渡し」(collaborative hand-off)、両軸とも高・高の「共同開発」(co-development)まで4タイプを挙げている。ここで、縦軸の「技術の不確実性」はGalbraith (1973)流で、必要な知識に対して不足している知識量と考えられており、技術の新奇性(novelty)、複雑性(complexity)、暗黙性(tacitness)が高いと、文書化が不十分(poorly documented)になりがちなので(p.727)、不確実性が高いとしている。

Figure 1. The inward technology transfer typology.

 ただしFigure 1は、Agfa社の事例分析で、論理的に破たんしてしまうので注意がいる。Figure 3ではOS、光学プリズム、レーザー半導体は対角線上に乗っていないが、たとえばOSの場合、市場購入だったが、本来は「協力的な引き渡し」であるべきだったと記述し(p.730)、市場購入のOSをFigure 3で、下図でいえば赤○の場所に位置付けるのであるが、これはおかしい。市場購入とは「商業ベースの購入」のことであり、Figure 1の趣旨を守るのであれば左上隅、下図でいえば青○の「商業ベースの購入」のポジションになくてはならない。しかし、この青○の位置では、OSは当初から対角線上で効率的だったことになって、話がおかしくなる。

 こうなってしまう原因は、そもそもFigure 1の横軸が間違っていたことにある。つまり、正しくは、Figure 1の横軸は「移転過程タイプ」であるべきで、「商業ベースでの購入」「容易な購入」「協力的な引き渡し」「共同開発」の4類型を並べるべきだったのである。その上で、「技術の不確実性」の各レベルに応じて効率的な「移転過程タイプ」は対角線上にあり、それが「最善移転過程タイプ」(best transfer process type)であるとすべきであった。そうすれば、OSのポジショニングは下図の赤○のようにFigure 3と同様の位置になり、そのレベルの「技術の不確実性」であるならば効率的な「移転過程タイプ」は「協力的な引き渡し」であったということが、対角線上の緑○ですっきりと示せるのである。


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