Saxenian, A. (1991). The origins and dynamics of production networks in Silicon Valley. Research Policy, 20(5), 423-437. ★☆☆ 【2014年6月4日】

 1988〜1990年に、米国シリコン・バレーのコンピュータ関連会社の経営者、管理者50人を対象に行ったインタビュー調査をもとにして書かれた論文で、図表が1枚もなく、すべて文字という珍しい論文。特に

  1. 組立受託(contract manufacture): プリント回路板(printed circuit board; PCB)のFlextronics、表面実装技術(surface mount technology; SMT)のSolectron
  2. ファウンドリー(silicon foundry): シリコン・チップや半導体製造のWeitek
  3. マイクロプロセッサーの共同開発: SunのSparc開発に関わったCypress
などの会社のケースが強調され、シリコン・バレーのあまり大きくない企業の企業間ネットワーク(inter-firm network)が重要な役割を果たしたと説いている。

 もっとも、守秘義務契約(non-disclosure agreement; NDA)もおかまいなしに、法律無視でどんどん協力、転職してもかまわない(p.429)とする独特の風土が、こうした企業間ネットワーク成立の前提なので、米国内の他地域も含め、あまり一般性がない。

 それに、この論文以降、1と2では結局こうした企業の事業はみんな米国の国外に逃げてしまい、近くにいなくてはだめなんだ(p.430)というインタビューも、今となってはむなしい。3についても、確かに米国の大企業はそっぽを向いたが、実は日本の富士通がSparcの製造をしていた(脚注28)という有名な話もあり、疑問が湧く。ちなみに、前年に出版されたFlorida and Kenny (1990)は全く逆の主張を展開している。


《参考文献》

Florida, R., & Kenny, M. (1990). Why Silicon Valley snd Route 128 won't save us. California Management Review, 33(1), 68-88.


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