日本自動車部品工業会(Japan Auto Parts Industries Association; JAPIA この論文では微妙に名称が間違っている)がオート・トレード・ジャーナルと共同編集して発行していた年鑑『日本の自動車部品工業』の1995年版に掲載されている1994年の日本の自動車部品メーカーのうち、データが完全に揃っていて、自動車メーカーへの売り上げが50%以上の部品メーカー125社を分析対象として、顧客範囲(customer scope)と売上高経常利益率の関係を調べた論文。
顧客範囲は、主に
そのことが、論文タイトルにもあるような学習に、どうして結びつくかといえば、それはインタビュー(pp.719-721)したら、複数の顧客と取引することで知識を得たと言っていたからだというだけで、計量モデルには全く反映されておらず、検証もされていない。ただし、この点はかなり疑問である。この論文のインタビューの書きぶりからすると、
実際はその逆、つまり学習は間に入らず、顧客範囲が利益率に直接影響を与えているのではないだろうか。確かに、新たな自動車メーカーとの取引を始めた部品メーカーに、その自動車メーカーに対する感想を聞くと「勉強になります」と異口同音に答えるものである。しかし、だから学習して利益が出るようになったのだろうと考えるのはいかにも拙速である。勉強になると言っていた同じ人物が、アルコールが入って打ち解けてくると、「(もともと下請けをしていた) A社はひどい。V字回復だとか言ってるけど、結局あんなの部品メーカーの利益をA社本体に付け替えているだけじゃないですか。下請けの搾取ですよ。それに比べたら今度取引を始めたB社は本当にいい会社で、適正な利益を認めてくれている」。あるいは「(もともと下請けをしていた) C社は、指導はしてくれるけど、納入価格が安いので利益はほとんど出ないんですよ。ただ、あれだけ品質にうるさいC社に収めている部品だということで、他の自動車メーカーがC社より高い値段で部品を買ってくれるようになるので、そこで利益が出るようになるんですけどね」。私には、こちらの話の方が、顧客範囲が広がれば利益率が上がる理由として、はるかに筋が通っていて、納得性が高いように思える。そして、そこには新しい取引先との学習の話は出てこない。ストレートに、
なお、この論文は、本文中で引用されている文献が何本もreferencesのリストから抜け落ちていたり、p.724で明示されているAppendix 1 がなかったりと、かなりずさんな印象を受ける。査読がついていてこうなのだろうか。