Mohr, J., & Spekman, R.
(1994).
Characteristics of partnership success:
Partnership attributes, communication behavior, and conflict resolution techniques.
Strategic Management Journal, 15(2), 135-152.
★☆☆ 【2011年10月12日】
どんなパートナーシップが成功するのかを調べることを目的とした研究らしい。ただし、筆者たちが強調しているような戦略的提携の類の話ではない。パソコンのディーラー102社 (従業員数の平均24名、月間総売上高の平均115万ドル、取引年数の平均3.78年) を調べたもので、ランダムに指定したパソコン・メーカーとの関係について質問票に答えてもらっている (p.140)。また、パソコン・メーカーと資本関係のあるディーラーは除外されている。そもそも、ランダムに選んだ取引先(メーカー)とディーラーとの関係をパートナーシップと呼ぶこと自体に違和感がある。
@パートナーシップの属性 (attributes)、Aコミュニケーション行動、Bコンフリクト解決手法に分類される質問項目を5点尺度で調べて、パートナーシップ成功の指標(2社間の取引額指標、利益に対する満足、メーカー側のサポートに対する満足)との関係を重回帰分析で調べているが、なぜかすべての変数を投入した重回帰分析の結果は示されておらず (p.114の脚注6によれば似た結果が得られたらしいが)、@、A、B別に3枚の表(Tables 2, 3, 4)で分析結果が示されている。有意になった変数もあれば、ならなかった変数もあり、有意になったものに関しては「仮説」を支持していたとされている。
しかし、これで、どんなパートナーシップなら成功するのか、分かったことになるのだろうか? そもそもパソコン・メーカーとディーラーとの関係で、何をもってして「成功」といえるのか? そこらへんをきちんと議論しておかないと、調査設計すらできないだろう。たとえば、この論文では、メーカー側は無視して、ディーラー側だけしか調べていないが、利益やメーカー・サポートに関する満足は、ディーラー側とメーカー側とでは、明らかに対立するはずである。さらにいえば、ドライな市場取引が中心の領域では、それをパートナーシップとして無理矢理測定しようとすること自体が、間違っている可能性もある。
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