組織学習論について、要領よくまとめられたレビュー論文。ただし、March & Simon (1958)あたりの近代組織論の知識は、当然あるものという前提で、あちこち説明を省略しながら書いているので、March & Simon (1958)を読んだことのない人は、意味が分からなかったり、誤解したりするかもしれない。
いわゆるMarch系の組織学習論についてまとめていて、日本語で読める文献は意外と少ないが、興味のある人は、高橋(1998)に、この論文以降も含めたMarch系の組織学習論についてのレビューがある。ちなみに、この論文で、個人的に一番印象深いのは、pp.321-322の学習曲線について書かれた部分で、経営戦略論の経験曲線に上書きされてしまって、ほとんどロスト・ワールドと化していた学習曲線の基礎研究に関して、要領よく光を当てている。この部分を手掛かりに、さらにレビューして書いた論文が高橋(2001)で、実は、経験曲線の「経験則」のかなりの部分が実証的に否定されていたものであったことが明らかにされている。
March, J. G., & Simon, H. A. (1958; 1993). Organizations. 1st ed., New York, NY: John Wiley & Sons; 2nd ed., Cambridge, MA: Blackwell. ★★★
高橋伸夫 (1998).「組織ルーチンと組織内エコロジー」 『組織科学』32 (2), 54-77. 簡略版
高橋伸夫 (2001).「学習曲線の基礎」『経済学論集』66 (4), 2-23, 東京大学経済学会. PDF