組織学習には多くの長所があるが、学習過程には制約がある。論文の前半では、その制約として学習の近視眼を3形態挙げている:
論文の後半では、March (1991)で提唱した二つの活動、探索(exploration)と掘り起し(exploitation; 活用、深耕とも訳されるが、定訳はない)を取り上げ、両者のバランスをとることが重要だと説いている。ただし、失敗の罠(failure trap)で探索の繰り返しに陥り、成功の罠(success trap)で掘り起しの繰り返しに陥るとも。
頻繁に引用される論文なので★★☆にしてあるが、論文としての出来は疑問で、前半と後半がどのように結びついているのかは不明である。一般には、「近視眼」のイメージから、近視眼だから探索が減って、掘り起しが増えるという話なのだろうと思われているが、論文にはっきりとは明記されていない。仮にそういう話だとしても、学習によって探索よりも掘り起こしが優先されること自体は問題ではないので注意がいる。
Herriott, S. R., Levinthal, D., & March, J. G. (1985). Learning from experience in organizations. American Economic Review, 75(2), 298-302.
March, J. G. (1991). Exploration and exploitation in organizational learning. Organization Science, 2(1), 71-87.
【解説】佐藤秀典 (2008)「Marchの組織学習観と学習の近視眼―近視眼が問題なのか?―経営学輪講 Levinthal & March (1993)」『赤門マネジメント・レビュー』7(6), 409-418. PDF