用語「パラダイム」については、経営学者をはじめとして使い方が無茶苦茶で、いまやそもそも何を意味していたのかが忘れ去られようとしているが、この第5章の最初の段落にある文章が、その真の意味である。すなわち、
「ある一時期におけるある分野の歴史を細かく調べると、いろいろな理論が概念や観測や装置に応用される際に、標準らしき一連の説明の仕方が繰り返されていることに気づく。これらがその専門家集団のパラダイムであって、教科書や講義や実験指導の際に現れてくるものである」(邦訳p.48)
"Close historical investigation of a given specialty at a given time discloses a set of recurrent and quasi-standard illustrations of various theories in their conceptual, observational, and instrumental applications. These are the community's paradigms, revealed in its textbooks, lectures, and laboratory exercises." (p.43)
どんな例があるのだろう? 実は、半導体製造に使われる光露光装置の改良に際して、専門家集団が繰り返し繰り返し、これでもかというくらいしつこくRayleigh criterionを使ってきたが、これなどは好例である( Takahashi & Kikuchi, 2017)。
Takahashi, N., & Kikuchi, H. (2017). Rayleigh criterion: The paradigm of photolithography equipment. Annals of Business Administrative Science, 16. ダウンロード