ボーン・グローバル(born globals)「生まれつきのグローバル企業」とでも訳すのだろうか。設立時あるいは設立初期段階から、知識ベースの資源で複数国で売上を上げる国際ビジネスを追求する事業組織(p.124)のことを意味している。
第一段階で、24社の経営者、6人のボーン・グローバルの研究者、3人の貿易の専門家のインタビューをしたところ、ボーン・グローバルは、(a)国際起業家志向と(b)国際市場志向の文化をもち、@優れた技術力(technological prowess)をもち、Aユニークな製品を開発し、B品質重視で、C海外の販売業者を通じて世界市場で売っているという特徴があり、インタビューした会社は(P)国際市場での優れたパフォーマンスを追求していたことが分かったという。そこでこの関係: (a)(b)→@AB→(P) を第二段階の質問票調査のデータで検証している。質問票調査は、1980年以降に設立され、売上の25%以上が輸出である米国企業900社を無作為抽出して、203社からデータを得たもので、概ね検証されたとしている。
ただ、この論文ではパス解析をLISRELを使って行っているので、モデル全体のフィットネスは出てこず、各段階でのパス係数だけしか分からない。これはamosを使って、共分散構造分析を行うべきである。また、この関係が検証されたとすると、ボーン・グローバルは、別に珍しい会社ではないことになる。日本の中小企業でも、Aニッチ市場向けのユニークな製品を製造する場合には、国内需要だけでは食っていけないので、C世界各地の販売業者と代理店契約を結んで販売することは、よく行われてきている。それがボーン・グローバルだったのだ……というのであれば、それはそれでいいのだが、本当にそれでいいの?