Katz, R., & Allen, T. J. (1982). Investigating the Not Invented Here (NIH) syndrome: A look at the performance, tenure, and communication patterns of 50 R & D project groups. R & D Management, 12(1), 7-19. ★★★

 この論文では、冒頭の要約の中で、Not-Invented-Here (NIH)症候群のことを「安定した構成(composition)のプロジェクト集団が、当該分野の知識を独占的に保有していると信じる傾向」と定義している。その結果として「そのことで外部者からの新しいアイデアに対してはパフォーマンスを損ないそうだと棄却することにつながる」としている。この論文はNIH 症候群の論文として頻繁に引用される(なので★★★にしてある)にもかかわらず、このNIH 症候群の定義は、今日用いられているNIH 症候群の意味「自前主義」とは違う。しかも本文中の分析では、在職年数の長期化によって引き起こされるプロジェクト・パフォーマンスの低下現象をNIH 症候群と呼んでいる。この論文の無茶苦茶ぶりは高橋, 稲水(2007)で詳細に指摘されている。いずれにせよ、「自前主義」の意味でNIH 症候群に言及する際に、この論文を注釈抜きに引用することは、この論文を読んでいない(=孫引きしている)ことを自ら吐露していることになるので、要注意である。


《参考文献》

【解説】高橋伸夫・稲水伸行 (2007)「NIH症候群とは自前主義のことだったのか?―経営学輪講 Katz and Allen (1982)」『赤門マネジメント・レビュー』6(7), 275-280. PDF


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