Hinds, P. J., & Mortensen, M. (2005). Understanding conflict in geographically distributed teams: The moderating effects of shared identity, shared context, and spontaneous communication. Organization Science, 16(3), 290-307. ★☆☆ 【2020年7月1日】

 長いタイトル通りの論文。つまり、地理的に分散したチーム(geographically distributed teams)がどんなコンフリクトに直面しているのかを、共有されたアイデンティティ(shared identity)、共有された文脈(shared context)、自発的コミュニケーション(spontaneous communication)をモデレータ変数として分析した論文。本来は、分散チームと一ヵ所に集中したチーム(collocated teams)とを対比した方が分かりやすいはずだが、おそらく、それでは結果が出なかったのであろう。この論文では分散(distribution)をサイト数で表している(pp.296-297)。サイト数1だと集中チームということになるが、この研究では意図的に主に米国・欧州の2サイトに分散したチームを選んだらしい(p.297)。実際には、43チーム288人を調べて、そのチームの中には、サイト数3のものも含まれている。コンフリクトは個人間コンフリクト(interpersonal conflict)とタスク・コンフリクト(task conflict)が考えられていて、結果は、仮説の一部を除き、概ね予想通りということのようだ。ただし、Figures 4-6はそれぞれ二つのコンフリクトに対応して2枚ずつ6枚のグラフが示されているが、直線でごまかさずにプロットした方が良心的であろう。多分、「サイト数3」の外れ値が効いているのではないだろうか。

 この論文で何が言えたのかを議論しても生産的ではないと思うが、ただ、変数や測定方法はなかなか楽しい。特に、Figure 3 (p.297)の図を使って、共有されたアイデンティティを測定するアイディアなどは、すぐにでも使えそうである。


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