RBV (resource-based view)の論者である著者二人が、ダイナミック・ケイパビリティ(dynamic capability)の分野に参入し、dynamic resource-based theory を目指した論文。能力(capability)に、創成期(founding stage)・発達期(development stage)・成熟期(maturity stage)のライフサイクルがあると主張し、成熟期に達すると、今度は少なくとも六つのR (six Rs) で示される能力ライフサイクルの六つの付加的段階の一つに分岐する(branch)としている。すなわち、退出(死) (retirement (death))・縮小(retrenchment)・再生(renewal)・複製(replication)・再配置(redeployment)・再結合(recombination)である(p.1000)。
とはいうものの、根拠は不明で、エビデンスの提示もない。またこの論文では能力をオペレーショナルとダイナミックに分類しているが(p.999)、能力の構築と変化はダイナミック・ケイパビリティを必要としないとされているし、能力ライフサイクルは両方に適用される(p.1004)とされている。また、分岐の際に、ダイナミック・ケイパビリティが影響するわけでもない。つまり、二つに分類する理由もよく分からないが、ダイナミック・ケイパビリティの位置づけもよく分からない。もともとRBVの話はスタティックな話だが、“Dynamic capabilities”という節(pp.1007-1008)では、R&Dや買収を取り上げて、ダイナミック・ケイパビリティというラベルを貼り付けただけに見える。