Gassmann, O., & von Zedtwitz, M. (2003). Trends and determinants of managing virtual R&D teams. R&D Management, 33, 243-262. ★★☆ 【2013年1月23日】

 仮想チーム(virtual team)を、Lipnack and Stamps (1997)に倣い、「共通目的に導かれた相互依存的な課業を通して相互作用し合い、情報・通信・輸送技術で強く接続し、空間、時間、組織の境界を横断して働く人々とサブチームの集団」と定義している(p.244)。

 1994年から2000年にかけて、37の技術集約的(technology-intensive)多国籍企業の204人のR&Dディレクター、プロジェクト・マネジャーをインタビューして、仮想R&Dチームを4タイプに分類している。分散した(dispersed)プロジェクト・チームにおける集権的統制(centralized control)の程度が小さい順に、次のようになる。

  1. 分権化した自己調整
  2. R&Dコーディネーターとしてシステム・インテグレーター1人
  3. システム・アーキテクトとしてのコア・チーム
  4. 集権化した仮想チーム
ただし、これが仮想チームの分類になっているのかどうかは疑わしい。このうち両極端AとDについては、Aはチームとはいっても自己調整に任せてしまっているので、そもそもチームなのかどうかも疑わしいし、Dはわざわざ「仮想チーム」と書いているが、物理的に一か所にチーム・メンバーを集めるというものなので、これでは、そもそも分散しておらず、仮想ではない普通のプロジェクト・チームであろう。間のBとCは仮想チームっぽいが、両者の違いは調整を1人でやるかチームでやるかの違いである。

 この論文はさらに4つの決定因(determinant)

  1. イノベーションのタイプ {ラディカル/漸進的}
  2. プロジェクトの性質 {組織的(systemic)/自律的}
  3. 知識モード {暗黙的(tacit)/明示的(explicit)}
  4. 資源を束ね具合(degree of resource bundling) {補完的(complementary)/冗長的(redundant)}
を挙げ(p.254)、それを使って、ラディカル・イノベーションで、組織的プロジェクトで、暗黙的知識が広く行き渡り、補完的資源が存在するときは集権化が必要だが(P1)、漸進的イノベーションで、自律的プロジェクトで、明示的知識が広く行き渡り、冗長的組織が存在するときは分権化が可能になる(P2)という命題を掲げている。結論では、五つの動向(trend)を観察したとまとめられている。

 ただし、命題の検証等が行われているわけではないし、そもそも組織的/自律的(2)、補完的/冗長的(4)は、集権/分権とトートロジーであろう。また、この論文の議論は、多国籍企業の調査によっているが、この論文の主張は、多国籍企業に限らず、一国内で展開している企業についてもそのままあてはまるはずである。しかし、そのことが多国籍企業で特に強く意識されるのは、国によって言語や文化の違いがあり、 Johanson and Vahlne (1977) が指摘するような心的距離が存在するためであろう。そのことが暗黙的/明示的(3)に直接的につながってくる。


《参考文献》

Johanson, J., & Vahlne, J.-E. (1977). The internationalization process of the firm: A model of knowledge development and increasing foreign market commitments. Journal of International Business Studies, 8(1), 23-32. ★★☆

Lipnack, J., & Stamps, J. (1997). Virtual teams: Reaching across space, time, and organizations with technology. New York, NY: Wiley.


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