Fajardo, T. M., Zhang, J., & Tsiros, M. (2016). The contingent nature of the symbolic associations of visual design elements: The case of brand logo frames. Journal of Consumer Research, 43 (4), 549-566. https://doi.org/10.1093/jcr/ucw048 ★★☆ 【2022年7月6日】


 ブランドのロゴに外枠(logo frame; この論文では長方形のみ)を付けたらどうなるかを調べた不思議な論文である。なぜ不思議かというと、たとえば、最初の研究1を見ても、1=「絶対に購入しない」、・・・、9=「絶対に購入する」の9点尺度で測った購買意欲(purchase intent)は、ロゴ・フレームがあってもなくても関係なくて、(Figure 2から計算すると)どちらも平均5.4だからである。ところが、著者たちは、これが疑似無相関だと「見破る」のだ。

 えっ、どんな根拠があって? と聞きたくなる。ロゴ・フレームについての先行研究Cutright (2012)も多少は何かのヒントにはなったのかもしれないが、まるで天からの啓示でも受けたかのようだ。研究1は、もともとAmazon's Mechanical Turk [MTurk]で131人の参加を得て、彼らをロゴ・フレームの有・無とリスク知覚(risk perception)の高・低(返品不可・返品可)の2×2=4条件のどれかにランダムに割り当てて、購買意欲を答えてもらったものだった。その結果、実は、低リスクではフレーム無しの方が購買意欲が高く、高リスクではフレーム有の方が購買意欲が高かった(Figure 2)。だから合算すると打ち消し合って無関係に見えたというわけだ。ある意味これが結論であり、後の研究2、3、4、5A、5B、6A、6Bは、これを手を変え品を変え確かめたものになっている。

 そこから一歩踏み出した主張としては、General discussionで、ロゴの外枠は、高リスク下では「保護」(protecting)とポジティブに、低リスク下では「拘束」(confining)とネガティブに知覚されるからではないかと提案している(p.562)。これまた不思議なのだが、著者たちは、まるで知らないで書いているのだろうが、「ロゴ・フレームは物理的境界と同様に、保護(protection)または拘束(confinement)のいずれかを連想させる」(p.551)という表現は、ウェーバーの「殻」(ゲホイゼ; 「鉄の檻(iron cage)」はパーソンズによる誤訳)そっくりなのである。しかもゲホイゼは、最初の日本語訳(梶山力訳)では「外枠」と訳されていたし、21世紀に入ってからのコールバーグの英訳ではcasingと訳されている(高橋, 2011)。不思議だ。まるで何かに導かれているかのようだ。実に興味深い。


《参考文献》

高橋伸夫(2011)「殻(1): “鉄の檻再訪”再訪」『赤門マネジメント・レビュー』10(4), 245-270. https://doi.org/10.14955/amr.100401


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