Ericsson, K. A., & Simon, H. A. (1984). Protocol analysis: Verbal reports as data. Cambridge, MA: MIT Press. ★★★

 Sarasvathy (2008)でも主要な研究方法として採用されている“think aloud” protocolについて、Appendix (pp.374-379)を基に紹介しておこう。まず次の3種類の口頭報告を区別する。

  1. 声に出す(talk-aloud)報告
  2. 声に出して考える(think-aloud)報告
  3. 回顧的(retrospective)報告

 言語化の指示と言語化の作成を除けば、唯一の違いはモニタリング実験者の存在とボイス・レコーダー(当時はテープ・レコーダー)の存在だが、しばらくすると、被験者は、実験者とボイス・レコーダーの両方に慣れるので大丈夫。下記に提示する2種類の説明書にあるウォームアップ手順は、被験者が口頭での情報を同時に言語化するのに役立つという観察に基づいている。重要なことは、このような情報を簡単かつ直接的に言語化することで、声に出して考える(think-aloud)は、被験者が慣れ親しんでいるであろう回顧的で説明的な報告ではなく、気づいた考えを同時に言語化するものであることが被験者に明確になることである。したがって、最初の課題(必要であればそれ以上の課題)は、会話による言語化を引き出すために使用するものと同じで、唯一の違いは、「声に出すための説明書」では、非言語的な形でコード化された情報の言語化を認める、あるいは奨励することである。全体として、被験者が声に出して考えることに慣れ、同じ情報を回顧的および同時的に報告するようになるまで、ウォームアップ課題を提示することである。時には、実験者は、声に出して考えている間に報告された情報と、回顧的に報告された情報の違いを指摘する必要があるかもしれない。また、被験者は、声に出して考える際に、より回顧的な報告方法を用いたり、回顧的な報告の際に、特に誤りを犯したことを認識した場合には、なぜそのように考えたのかを分析したりすることがある。

声に出すための説明書 (Instruction for talk-aloud)

※ウォーミングアップのための課題を選ぶのは簡単ではない。暗算の掛け算は難しすぎて、被験者が恥ずかしい思いをすることがあるので、その場合は、2桁または3桁の数字の足し算をするのが適切だろう。他の課題としては、「beefと韻を踏む単語をできるだけ多く見つけてください」。

声に出して考える+回顧的報告(think-aloud with retrospective)のための説明書


《参考文献》

Sarasvathy, Saras D. (2008). Effectuation: Elements of entrepreneurial expertise. Cheltenham, UK; Northampton, MA: Edward Elgar.
(加護野忠男監訳 高瀬進・吉田満梨訳)『エフェクチュエーション: 市場創造の実効理論』碩学舎, 中央経済社(発売), 2015. 要約

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