この論文は、時間圧力(time pressure)が消費者の決定にどのような影響を与えるのか、五つの実験で調べたものである。ここで注目される決定は「延期の決定」(deferral decision)である。実験に使われるのは一対の二つの選択肢で、共通の特性と各選択肢にユニークな特性をもっている。ユニークな特性が、(i) 好ましいもの同士の場合、消費者は二つの選択肢の間では接近・接近葛藤、(ii) 好ましくないもの同士の場合は回避・回避葛藤が生じると心理学では考えられている(Lewin, 1935; Miller, 1944; March & Simon, 1993, ch.5 訳注3)。また、共通の特性もユニークな特性も含めて、総合的に判断して決める場合には補償型(compensatory)決定戦略、特定のユニークな特性だけを見て決める場合は非補償型(noncompensatory)決定戦略と呼んでいる。その上で、次のような仮説を立てる。
Lewin, K. (1935). A dynamic theory of personality: Selected papers (translated by D. K. Adams & K. E. Zener, trans.). New York: McGraw-Hill (相良守次, 小川隆訳『パーソナリティの力学説』岩波書店, 1957)
March, J. G., & Simon, H.A. (1993) Organizations. 2nd ed., Cambridge, MA: Blackwell. (高橋伸夫訳『オーガニゼーションズ 第2版―現代組織論の原典―』ダイヤモンド社, 2014) ★★★
Miller, N. E. (1944). Experimental studies of conflict. In J. McV. Hunt (Ed.), Personality and the behavior disorders: A handbook based on experimental and clinical research: Vol. 1 (pp.431-465). New York, NY: Ronald Press.