日本企業の企業文化・顧客志向・革新性と業績との関係を調べた論文。セールス・ポイントは、売り手企業(vendor firm) 1社につき、当該企業のマーケティング経営者(marketing executive) 2名と買い手側の顧客企業(customer firm)の購買経営者(purchasing executive) 2名、合わせて4人をquadradと呼んで、東証(論文p.28には Nikkei stock exchange in Tokyo とあるが、そんなものはないので、東京証券取引所の間違いだろう)上場企業の計50のquadradsのインタビュー・データをもとに分析していること。ただし、インタビューは下記のような質問を日本語で行ったもので、quadradを強調している割には、顧客企業にも聞いているのは、2.顧客志向だけなので注意がいる。
分析の結果、Table 1 (p.30)によれば、
Table 2 (p.30)は高業績群と低業績群の2群の判別関数(discriminant function)を使って、a、b、cを統計的に検定しているらしく、いずれも5%水準で有意だったとしているが、通常の判別分析とは違うので、何をしているのかはよく分からない。また、Figure 1 (p.25)を見ると、機械的/有機的と内向き/外向きの2次元で測定して、ABCDの4つの象限に50社を位置づけるのではないかと予想してしまうが、そんなことは全くしないので、見ると誤解を招くだけ。さらに、いつ調査したのか書いていないが、1990年前後は日本はバブル景気で、世界中で日本と日本企業の存在感が著しく高かった時期だが(だから、この論文の調査も企画されたのだろうが)、1992年頃までにはバブルがはじけ、調子が悪くなり、すっかり自信を失って、失われた10年とか20年とかを過ごすようになる。この変化が急激な時期に、仮に数年かけて調査していたとすると、バブルがはじける前後で雰囲気がガラッと変わっているので、こうした分析をすること自体が無意味になる。調査時期が書かれていないので、なおさら怪しい。この論文の手法ではなく、結果を引用するのは止めた方がいい。