D'Aveni, R. A., & MacMillan, I. C. (1990). Crisis and the content of managerial communications: A study of the focus of attention of top managers in surviving and failing firms. Administrative Science Quarterly, 35(4), 634-657. ★★☆ 【2011年10月5日】

 1972年から1982年の間に倒産を申請した会社57社と、各倒産会社に対して規模、製品/市場で釣り合った生存会社(matched survivor)1社を選んだ計57社について、倒産年から遡ること5年分の株主向けレター(shareholder letter)を内容分析(content analysis)した論文。レターの内容は文章ごとに、

  1. インプット要因(input factors): 債権者、供給業者に関するもの
  2. アウトプット要因(output factors): 顧客または需要に影響を与える一般的な経済要因に関するもの
  3. 内的環境(internal environment): オーナー、従業員、経営トップに関するもの
の三つに分類され、該当する文章の数をそれぞれ、インプット注意(input attention)、アウトプット注意(output attention)、内的注意(internal attention)として定義している。これら3変数について分析した結果、生存会社は3変数のバランスが比較的取れていたのに対して、倒産会社では、倒産2年前くらいから、内的環境とインプット要因、債権者に注意を奪われてしまう羽目に陥っていた(end up locked into internal, input, and creditor-driven concerns; p.649)ことが分かった。つまり、経営が悪化するにしたがい、債権者たちに気を遣わざるをえなくなり、株主向けのレターもそうした内容が増えてくるのである。ある意味、当然のことだろう。

 ところが、なぜかこの論文の冒頭の要約では、その因果関係は逆に解釈されてしまっている。すなわち、生存会社の経営者は、需要減退が起こると、外部環境に注意を払っていたが、倒産するような会社では、そうしたアウトプット要因は否定もしくは無視されていた(p.634)。だから倒産したのだと。でも、それってどうなの?


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