Ashforth, B. E., & Gibbs, B. W. (1990). The double-edge of organizational legitimation. Organization Science, 1(2), 177-194. ★★☆ 【2020年6月3日】

 組織には構成員(constituent)の支持を引き付ける正統性(legitimacy)が必要である。そのため構成員が知覚する正統性の低い組織にとっては、正統性の主張が必要になる(命題1)。その一般的手段として、(1)強制的同型化をはじめとする実質的手段(substantive management)や(2)行為の意味を変える象徴的手段(symbolic management)で正統性を得ようとする。

 しかし、知覚された正統性が低い構成員ほど、そうした正統化の企て(legitimation attempts)に懐疑的(skeptical)なので(命題2)、正統性の過度な主張(protesting too much)と知覚され、Table 3 (p.187)のように、(a)下手な(clumsy)行為者は、非倫理的(unethical)で、高圧的(heavy-handed)で、無神経(insensitive)だと知覚されがちで、(b)神経質な(nervous)行為者は、教条的(dogmatic/rigid)で、狭量(intolerant)で、回避的(evasive)だと知覚されがちで、(c)熱心すぎる(overacting/overzealous)行為者は、過剰(self-aggrandizing/overrecting/exaggerated)で、扇動的(inflammatory)だと知覚されがちである(命題3)。それがさらに知覚された正統性を減じてしまう(命題4)。こうなると、正統化の悪循環(the vicious circles of legitimation)である。つまり、正統化(legitimation)は両刃の剣(double-edge)であり、正統性が足りない組織も、必ずしも正統化を怠ったわけではなく、この正統化の悪循環に陥った結果かもしれない。

 構成に難がある論文だが、多分、言いたいことはこんなところだろう。正統化の悪循環の図 Figure 1 (p.179)はマイナスの矢印が二つ(つまり偶数個)なので正のフィードバックになっていることに注意がいる、つまり、Figure 1は疑わしい正統性(problematic legitimacy)から出発するから悪循環になるが、正統性から出発すれば好循環になる。また、このFigure 1は論文の冒頭部分に登場して要約だと言及されてはいるが、解説は末尾のConclusionにしか書いていない。しかも、Figure 1の正統化の悪循環の図は、4つの命題とは関連付けられておらず、実際、無関係で、本文の要約になっていないので注意がいる。


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