Abernathy, W. J., & Utterback, J. M.
(1978).
Patterns of industrial innovation.
Technology Review, 80(7), 40-47.
★★★ 【2012年5月9日】
この論文は、一連の業績の流れの中での位置づけを考えないと、その価値が理解できない。まず1975年のOmega誌にUtterback & Abernathy (1975)、次に1978年のTechnology Review誌 6月/7月号にこの論文、そして同年12月にAbernathy (1978)が出版され、これらの一連の業績で発表されたモデルは「A-Uモデル」あるいは "Abernathy-Utterback model" (Utterback, 1994, p.xix)と総称されるようになった。Utterback (1994)の序文によれば(Preface, p.viii)、Utterbackが1974年にAbernathyと出会うまでは、大部分は実りがなかった(largely fruitless)と吐露している所をみても、モデル自体はAbernathy主体で作られたものだと推察されるが、現在は「A-Uモデル」と通称されている。そのA-Uすなわち、Abernathy & Utterbackという順番の文献は、この論文だけであり、「A-Uモデル」であえて一つを指定するとこの論文になるのかもしれないが、最終形がAbernathy (1978)である以上、下記のような成立プロセスを考えると、それでは不正確であろう。
A-Uモデルと呼ばれるもののうち、製品イノベーション(product innovation)/工程イノベーション(process innovation)のアイデアについては、Utterback & Abernathy (1975)で登場している。そして、この論文Abernathy & Utterback (1978)で、ドミナント・デザイン(この論文では dominant product design, p.44)のアイデアと、時系列で、流動パターン(fluid pattern)→移行パターン(transitional pattern)→特化パターン(specific pattern)(p.40の図表)に分けるアイデアが登場する。この論文のタイトルにもなっているこの3パターンこそが、この論文の肝といえるが、なぜか本文中では用語として明示的に登場していないので注意がいる。どういう形式の雑誌なのか理解できないのだが、論文本体はpp.41-47で、その前のページp.40に図表だけが独立して掲載されているという不思議な形態である。ちなみに、その肝であるはずの3パターンは、Abernathy (1978, pp.68-72)では、流動状態(fluid state)(パターン2 (pattern 2))→移行(transition)→特化状態(specific state)(パターン1 (pattern 1))と呼び方が変化していることにも注意がいる。
《参考文献》
Abernathy, W. J. (1978).
The productivity dilemma: Roadblock to innovation in the automobile industry.
Baltimore, Maryland: Johns Hopkins University Press.
Utterback, J. M., & Abernathy, W. J.
(1975).
A dynamic model of process and product innovation.
Omega, 3(6), 639-656.
Utterback, J. M. (1994).
Mastering the dynamics of innovation: How companies can seize opportunities in the face of technological change.
Boston, Mass.: Harvard Business School Press.
(大津正和・小川進訳『イノベーション・ダイナミクス』有斐閣, 1998)
【解説】秋池篤 (2012)「A-Uモデルの誕生と変遷―経営学輪講Abernathy and Utterback (1978)」『赤門マネジメント・レビュー』 11(10), 665-680.
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