河合忠彦, 高橋伸夫 (1992) 「組織活性化の展望」『組織科学』26(3), 2-6.  【解説】

 組織の活性化された状態の定義として「組織のメンバーが、(1)相互に意思を伝達し合いながら、(2)組織と共有している目的・価値を、(3)能動的に実現していこうとする状態」を提案することにしたい。この定義は、Takahashi (1992) の定義(2)(3)に(1)を付け加えたものであるが、こうすることで、実はバーナード(Barnard, 1938, p.82 邦訳p.85)の公式組織成立の必要十分条件「組織は、(1)相互に意思を伝達できる人々がおり、(2)それらの人々は行為を貢献しようとする意欲をもって、(3)共通目的の達成をめざすときに成立する。」とも基本的に合致することになる。

 『広辞苑』(岩波書店)によると、「活性化」とは「沈滞していた機能が活発に働くようになること。また、そのようにすること。」とある。沈滞していた組織、というより、既に組織として機能しているかどうかも疑わしくなった「組織」をバーナードの公式組織成立の必要十分条件を満たすような状態にすることを「活性化」であると考えると、活性化の議論は理論的にすっきりしたものになる。

 ところで、ここで提示されたような組織の活性化された状態の定義は、一般にもたれている「活性化」のイメージとどの程度重なるものであろうか。このことについて、JPC1987調査、JPC1988調査のデータを利用して調べてみることにしよう。JPC1987調査では、次のような質問を設定しておいた:

Q1. あなたは、あなたの会社は活性化していると考えますか?
  1. 活性化していると思う。 2. 活性化していないと思う。

さらに、JPC1988調査では、質問をYes-No形式に改めて、

Q2. 自分の会社は活性化していると思う。
  1. Yes 2. No

という質問を設定しておいた。これら二つの質問を除くJPC1987調査での50問、JPC1988調査での89問の計139問のYes-No形式の質問と二つの質問との間で2×2クロス表を作り、それらのうち相関の高い質問項目として、便宜的に相関係数であるCramer's Vの絶対値が0.3より大きなものを拾いあげてみると、1987年調査では0問、1988年調査では5問になった。それを、組織の活性化された状態の定義である「組織のメンバーが、(1)相互に意思を伝達し合いながら、(2)組織と共有している目的・価値を、(3)能動的に実現していこうとする状態」に対応させると、

  1. 伝達
  2. 目的
  3. 積極性
といったように対応が付けられる。ここで、***は0.1%水準で有意であること、( )内は有効オブザーべーション数を示している。

 以上のことから、「活性化」のイメージは組織の活性化された状態の定義とほぼ重なっていることがわかった。逆にいえば、組織が活性化された状態にあるかどうかは、Yes-No形式の質問Q2を使って直接的にきくことができると考えられる。

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