von Hippel, E. (1994). "Sticky information" and the locus of problem solving: Implications for innovation. Management Science, 40(4), 429-439. ★★★【2014年4月17日】

 情報粘着性(information stickiness)について提唱した論文。情報の獲得、移転、使用にはコストがかかることを情報粘着性という。経済学者の中には、Arrowのように、こうしたコストはほとんどかからないと仮定して議論を進める人もいるが、もしコストがかかるとすればどうなるか? この論文で考えているのは、問題解決が行われる場所が影響を受けるということである。問題解決者が必要とする粘着性のある情報が、(1) 1か所だけに存在するならば、問題解決はそこで行われる。(2) 2か所以上に存在するならば、その間を往復(iterate)しながら問題解決が行われる。ただし、その往復コストが高ければ、(3) 問題は下位問題に課業分割されるか、(4) 情報粘着性を減らす投資が行われる。以上の検討が第3節〜第6節で順に行われる。(3)(4)でASIC (Application Integrated Circuit)の例は挙げられるが、測定などは行われず、概念的な論文である。


《参考文献》

【解説】宋元旭, 秋池篤 (2014)「イノベーションの発生場所と情報の粘着性:ユーザーイノベーションの発生原理」『赤門マネジメント・レビュー』13(8), 299-312. ダウンロード


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