Brusoni, S., Prencipe, A., & Pavitt, K. (2001). Knowledge specialization, organizational coupling, and the boundaries of the firm: Why do firms know more than they make? Administrative Science Quarterly, 46(4), 597-621. ★☆☆ 【2013年5月15日】


 従来は、設計、エンジニアリング、製造が単一の会社で行われるケースを扱った研究が中心だったので、この論文では、製造と研究開発が別のネットワークになっているケースで、そのうち研究開発のネットワークを扱っている。具体的には、航空機エンジンの大手メーカー3社(3社でターボファン・エンジンの世界市場の約90%を占めている, p.601)と、そのエンジンに使う部品「コントロール・システム」のサプライヤー4社について調査している。大手メーカー3社の社名は記されていないが、常識的に考えて、GE、ロールスロイス、プラット・アンド・ホイットニーのことだろう。

 開発に関して、大手メーカー3社のうちA社とB社は内部サプライヤー(own captive supplier)を使っている。C社は内部サプライヤー(in-house supplier)を使っていないが、その中でもサプライヤーとの関係は、以前は強かったが、弱くなっているそうだ(pp.603-604)。言い換えると、資本関係や親子会社関係ではなく、別の何らかの尺度で連結の強弱を考えていることになる。

 この論文のフレームワークは図2 (p.611)で、横軸が「製品相互依存性」で「予測可能/予測不能」、縦軸が「コンポーネント技術の変化率」で「均等/不均等」の2×2のマトリックスで示したものである。これが「組織的連結」(organizational coupling)の決定因(determinants)だというのである。つまり、左上の(予測可能, 均等)のセルには「分離」(decoupled)、右下の(予測不能, 不均等)のセルには「固い連結」(tightly coupled)、それ以外の二つのセルは「ゆるい連結」(loosely coupled)が適しているとしている(仮説か?)。

 ところが、ここから先の話は無茶苦茶になる。そもそも図3 (p.612)、図4 (p.613)で、四つのセルに、「分離」「ゆるい連結」「固い連結」のラベルを予め貼り付けてしまうことで(図4の右下の “loosely coupled” は明らかに “tightly coupled” の誤植だろうが)、分析がごまかされてしまう。本来は、横軸、縦軸を独立に測って、A社、B社、C社のポジショニングを行い、その上で、連結が仮説通りかどうかを検証するのであろうが、この論文では、連結が「分離」「ゆるい連結」「固い連結」のどれになっているかでA社、B社、C社のポジショニングを行ってしまうのである。これでは検証にはなっておらず、まったくのトートロジーである。

 これだけでも議論がおかしいのだが、さらにすごいのは、もともと「製品相互依存性」「コンポーネント技術の変化率」は航空機エンジンの技術的問題であり、本来であれば、3社ともほぼ同じ「製品相互依存性」「コンポーネント技術の変化率」であるはずなのに(つまり2×2のマトリックスで、3社とも同じセルに入らないといけない)、なんと、「分離」「ゆるい連結」「固い連結」で見ると、バラバラなのである。要するに、仮説(?)は正しくなかったことになる。図3、図4は、本当に、これでいいのだろうか? だとするとナンセンスな論文ということになるが。


《参考文献》

【解説】向井悠一朗 (2013)「組織の境界と知識の境界の不一致:複雑・大規模な製品の開発―経営学輪講 Brusoni, Prencipe, and Pavitt (2001)」『赤門マネジメント・レビュー』 12(7), 515-536. ダウンロード


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