Baird, L., & Meshoulam, I. (1988). Managing two fits of strategic human resource management. Academy of Management Review, 13(1), 116-128. ★★☆ 【2011年10月5日】

 人的資源管理を外的適合(external fit)と内的適合(internal fit)の二つの適合性から戦略的に考えようという趣旨の論文。ただし、この論文でいうところの「外的適合」「内的適合」は、通常の用語法とは異なる用いられ方をされているので注意を要する。
 まず、外的適合でいう「外」とは、次の五つの「組織の発展段階」(developmental stages of the organization)を指している。
  第T段階 創業(initiation)
  第U段階 機能的成長(functional growth)
  第V段階 コントロールされた成長(controlled growth)
  第W段階 機能的統合(functional integration)
  第X段階 戦略的統合(strategic integration)
 これらの五つの発展段階は、既存研究のモデルや理論から、論理的に最小公倍数的に導かれたものである。しかし、20社の調査、特に4社を詳細に調べたところ、この5段階は、スキップせずに順番を踏んで上がっていかないと、非効率(ineffective)であることがわかったらしい(p.122 命題? 4)。その意味では、まさに発展段階説を唱えていることになる。この5段階と組み合わせて考えられるのが、次の人的資源管理の六つの戦略的構成要素(strategic components)である。
  ・管理者の気づき(manager awareness)
  ・人事機能の管理(management of the personnel function)
  ・プログラムのポートフォリオ(portfolio of programs)
  ・情報技術(information technology)
  ・人事スキル(personnel skills)
  ・内的・外的環境の気づき(awareness of internal and external environment)
 この六つの戦略的構成要素について、各発展段階に「外的適合」した状態を記述したものが、「人的資源の戦略マトリックス」(the human resource strategic matrix)である(p.124 Table 2)。その上で、この6構成要素×5発展段階の戦略マトリックスを使えば、実際の組織をポジショニングすることができる。たとえば、プログラムのポートフォリオは第V段階で、人事スキルは第U段階……というように。ところが、このように第U段階のスキルで第V段階のプログラムを実行しようとすると、失敗してしまう。より正確に言えば、「もし構成要素が互いに適合しなければ、資金、時間、エネルギーが浪費される」(p.123)ことになる。これが「内的適合」である。したがって、戦略マトリックスでポジショニングした時に、六つの構成要素がすべて同じ発展段階であれば最善であるということになる(p.123 命題? 6)。
 とりあえず、できるだけ好意的に理解して整理するとこんな感じになるが、引用する際には、説明つきで「外的適合」「内的適合」を用いないと、意味が伝わらないだろう。

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