Abbott, A. (1981). Status and status strain in the professions. American Journal of Sociology, 86(4), 819-835. ★★☆ 【2014年11月19日】【2015年5月19日】

 医師や法律家のような、いわゆるプロ(professions, professionals)のステータス(status)について考察した論文。プロのステータスには、

  1. 「プロ内ステータス」(intraprofessional status)
  2. 大衆(public)が尊敬する「プロとしてのステータス」(extraprofessional status)
の二つがあり、両者は整合的ではなく、むしろ対立していると主張している。

 たとえば医師の世界では、専門外科>一般外科・内科>・・・>一般診療・アレルギー・皮膚科・精神科 のような序列があると報告されている。こうした序列(ただし、専門外科>・・・とは別次元の序列が次々と挙げられているので困惑する)を説明するものとして、(a)収入、(b)権力、(c)クライアントの地位、(d)困難さ(非ルーチン性)が挙げられてきたが、この論文はどれも否定する。そして、「プロ内ステータスはプロとしての純粋さ(professional purity)の関数である」(p.823)と主張する。

 それに対して、大衆が尊敬する「プロとしてのステータス」とは、プロ知識を通じた「無秩序への効果的な接触」(effective contact with the disorderly) (p.829)に基づくものである。論文には適切な例示がないが、たとえば、どこが悪いかわからないが、とにかく具合が悪く(無秩序)、医師に診てもらうとインフルエンザと診断されて適切な治療をしてもらう(効果的接触)・・・というようなとき、医師はプロとして尊敬され、大衆から「プロとしてのステータス」を得る。ところが、こうして第一線で活躍する医師(一般診療)のプロ内ステータスは低いのである。

 大衆が尊敬し、「プロとしてのステータス」を認められる人の「プロ内ステータス」が実は低い、という言い方をすれば確かにその通りだろう。ただし、「プロ内ステータスはプロとしての純粋さの関数である」というのは、この論文におけるプロ内ステータスの暗黙の定義であり、まったくトートロジーである。


《参考文献》

【解説】阿部真美, 劉冬蕾, 山本尚忠 (2015)「専門職および専門職集団におけるステータス決定要因―経営学輪講 Abbott (1981)」『赤門マネジメント・レビュー』14(10), 601-612. ダウンロード


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